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小原雅夫 イギリス写真展

 

 

From Countryside in England

 

Part 3

 

 

 

 

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Keswick-Ashness bridge

 

 

 

***アッシネス・ブリッジ (湖水地方) Ashness Bridge (Lake District) 

 



ケズウィックのB&Bで2泊したが、そこの女主人は活発でチャーミング、おまけに料理が得意だ。そして何にでも親切に相談にのってくれる。そのせいか、このB&BはBTAで貰ったリストの中では最高のハイリーコメンデッドにランクされている。
私達の部屋は、そう広くはなかったが、勿論清潔で快適だった。食後おばさんにこのランク付はどうやって決めるのか聞いてみた。
・・・覆面の調査員が来て泊まってチェックするのだが、帰りがけ支払い後に身分を明かす・・・そうな。
実はつい先日その調査員が泊まっていってびっくりしたとの事。
私がふざけて 「実は私も調査員なのだが…」 と話すと、大声で笑って「じゃあサービスしなくっちゃ」。
彼女に、この付近で最も好きな景色はどこかと聞いたところ、この橋を教えてくれた。 200年以上昔の橋だがその橋の佇まいに加えて、そこから見下ろしたダーウエント湖が最高との事。
我々が到着した時はあいにくどんよりと曇っていたが、それでも橋を超えて谷の向こうに湖が見え隠れする様はなかなか魅力的だった。川の勢いのよい流れは、湖へまっすぐに向かうという強い意思を感じさせさわやかだ。昼をずいぶんと回っていたが、到着した人々は皆一様に川縁に腰を下ろし弁当を広げ始めた。疲れきっていた人たちもこの時ばかりは表情が和む。
私達もそれに倣って弁当を広げた。サンドイッチ・リンゴ・クラッカーそれに飲物であったが美味しかった。

We stayed two days at a B&B in Keswick. The landlady was cheerful and charming, and also she was a very good cook. When I asked her which view was her favorite in the neighborhood, she told me about this bridge. She said that it is over 200 years old and the view of the Darwent Water from there is wonderful.   Unfortunately it was cloudy when we reached there, but beyond a valley the large lake could be seen in the distance. The swift stream of water looked as if it had a strong will to the lake. Following other people's example, here we had a simple lunch −apples and sandwiches−, and fully enjoyed it.  

 

 

 

昼食を食べるハイカー達 (アッシネスブリッジにて)
Hikers eating lunch (Ashness Bridge)

 

 

 


ダーウエント湖の眺め (アッシネスブリッジから山中に入ったところ)
A view of Derwent Water (near Ashness Bridge)

 

 

 

 

***山陰の牧場 (アッシネスブリッジから山奥に入ったところ)  
The meadow on the hillside (near Ashness bridge)  

 

 

英国人は何故こんなに羊が好きなのだろう。
英国では、到る所に石垣で囲まれた牧場があって、羊達がゆったりと草を食んでいる。
石の納屋をバックに緑の中で羊達が散らばっている様は心和む光景だ。羊毛よりも、きっとこの風景のために羊を飼っているに違いない。
アッシネスブリッジから山奥のワーテンドラスへ行く途中に見かけた牧場。母屋を白く塗って、緑の中から浮かび上がらせるあたりはなかなかおしゃれだ。
景観との調和がよく考えられている。 山の上に一本の木が見えるが、その付近にも点々と羊の群れが眺められる。 英国では、羊飼いと牧羊犬が羊を集めて移動させるコンテストをテレビで頻繁に放送していると聞いたが、このような広い牧場では牧羊犬の働きは大変に貴重なものだろう。 旅行中彼等の働きぶりを一度みたいものだと思ったが、朝寝坊の私達にはついにその機会がなかった。

 

 

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Watendlath

 

 

 

***ワーテンドラスの谷 Watendlath Valley 

 

 

ダーウエント湖畔から山道に入り、アッシネス・ブリッジを過ぎて、石垣に囲まれた一車線の道路をどんどん奥に入ってゆくと行き止まりがワーテンドラス村である。湖畔から12キロくらいであろうか。
写真で分かるように、ここは典型的な氷河地形のU字谷である。日本のように水の急な流れによって出来たV字谷と違い、凹凸は氷河の力で削られて、ほぼ平らな広い土地が谷底に出来る。露出している岩も氷河で削られ表面は滑らかだ。(写真の手前の岩)ニューヨークのセントラルパークの中にもそんな岩が見られるが、良く似ている。
この眺めを見ていて「我が谷は緑なりき」という映画の題名を思い出してしまった。(19世紀末のウエールズ地方を舞台とした物語) 緑豊かで、木々の下では牛達が草をはみ、沼には水鳥が遊ぶ。夏はこのように牧歌的な村であるが、きっと冬は大変なのではなかろうか。袋小路となった村への道は、うねうねとした石垣に囲まれた1車線のみで、車が出会うとどちらかが待避場所迄ずーっとバックしなければならない。
冬に雪が積もった時これをやるのは大変だし、積雪量によっては交通も遮断されるようだ。このため今でもこの地は秘境扱い。 この写真は村の小高いところから、いま来た方角を振り返って見たところである。

 

 

 

ワーテンドラスの石橋  Stone bridge in Watendlath

 

 

 

ワーテンドラスの村風景 Watendlath Village    

 

 

村といっても、農家の個数は3、4戸で、この写真が集落のほぼ全景である。
ここには昔ながらの石造りの農家と共に、周囲約2キロのこじんまりとした沼があるが、この沼が実に美しい。写真の右手下の水が沼からの流れである。水はきれいで透明度も高い。霧が出た時は大変に神秘的な雰囲気だそうで、そんな時にまた行ってみたいものである。村全部がナショナル・トラストの所有となっている。
写真中央の小さな車はナショナル・トラストの物で、傍に立っている人は、人々へナショナル・トラストへの協力を呼びかけている。つい彼と目が合ったので、挨拶をして、「私はもうナショナル・トラストの会員ですよ」と話すと、大変に嬉しそうに握手を求めてきて、数年前ここに日本のテレビ局が取材に来た時自分もインタビューされたことがあるなどいろいろ話してくれた。

 

 

 

***川べりの石の納屋  (ワーテンドラス)   
The stone barn beside the stream (Watendlath: Lake District)
   

 


私は小さな流れが好きだ。きらきらと春の陽に輝きながら轍を流れる雪解け水は、最も美しい身近な流れの一つだが、幼い頃、めだかが泳ぐ小川で小さな水車を回したり、笹舟を流したりすることも、たまらない喜びだった。
この小川の流れに耳を傾けていたら、そんな事を考えていた。
この納屋の中に入ったなら、流れの音はどんなふうに聞こえるだろう。石の壁に反射して、きっととても幻想的に響くに違いない。大小様々の大きさの石を組み合わせたこの壁は、まるで地層のようにも見えるが、よく左右のバランスを考えて積んであり芸術的でさえある。何百年か昔のこの土地の農民が作ったのだろうが、不揃いの石を組み合わせてでも何とか壁を作らなくてはと言う執念が伝わってくる。

 

 

 

抜け毛を払うガチョウ (ワーテンドラス湖)
A goose beating off its fallen feather. (Watendlath Tarn)

 

 

ワーテンドラスを特徴づけているのは何と言ってもこの湖の存在だ。英語では山中の小さな湖をTARNと呼ぶが、山中の小さな湖のために特別な呼び名を用いるのは、それだけその存在を愛しているからである。TARNに込められた素敵な所というイメージ通り、この Watendlath Tarn は実に美しいところだ。
魅力の理由の一つは周囲2キロというその大きさと斜面に囲まれている地形にある。この大きさ・地形により、写真が示すように、対岸の緑の牧草、長く横たわる石垣、草を食む羊達、そして釣り人、木々の影、などが手に取るように分かる。そしてここに人間の営みと自然との調和による一つの絵画が提供される事になるのだ。

 

 

 

忙しいガチョウたち (ワーテンドラス)
They are busy with their grooming. (Watendlath Tarn)

 

 

この湖には大小さまざまの水鳥が遊んでいるが、その中で一番大きな顔をしているのがこのガチョウだ。彼等は実に毛繕いが好きだ。私達が草地に腰を下ろしてぼんやりと景色に見とれたり周囲を歩き回ったりしている数時間の間ずっとこの毛繕いを続けていた。餌を食べたらあと他にすることがないのだから丁度良い暇つぶしなのかもしれないが。

 

 

 

 **上を見つめる鳥  (ワーテンドラス)  
A bird raising the eyes (Watendlath Tarn)

 


他の鳥たちが毛繕いに余念が無い中、この鳥だけは一羽ぽつんと離れたところにうずくまっている。 草の緑に顔の赤が映えてとても美しいが、それ以上に彼が我々の注意を引くのは、時々真上を見上げてはそのままじっとしている事である。我々は、その時はついにその理由が分からなかった。しかし、日本に帰って写真を引き伸ばして初めてわかった。虫が彼の頭上を旋回していたのだ。
ワーテンドラスの一日は穏やかに過ぎていく。

 

 

 

 

***鳥たちの毛繕い (ワーテンドラス) Grooming (Watendlath tarn)


たち込めていた雲が動き始めた。光の帯が牧草地や沼の水面を舐めるように動き回る。 程遠くない対岸の木立ちや羊の群れが、そして湖面がライトアップされる瞬間はとっても素敵だ。 しかし鳥たちはそんなショーにはお構いなく毛繕いに余念が無い。 何時間も飽きずに体のあちこちの毛をくちばしで丹念に鋤いては時々思いきり翼を打ち振るう。 細かな羽毛が光の中をきらきらと舞う………    

The clouds hanging over began to move. Beams of light broke through the clouds and moved around the marshland. When the beam picked out a stand of trees on the opposite bank and a flock of sheep, it is a wonderful moment. But the birds aren't intereted in the show and are busy with their grooming. They comb every nook and corner of the body with their bills for a long time. Sometimes they beat the wings with force. Fine fallen feathers are fluttering and twinkling in the light‥‥‥  

 

 

 

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Aira Force-----Kirkstone Pass

 

 

 

 

**アイラ・フォースの滝 (ウルス湖畔)   A waterfall   (Aira Force)

 

 

英国を車で走ってみるとよく分かるが、なだらかな丘陵の連続で、急な坂や高い山というのが殆ど見当たらない。という事は川の落差も少ないわけで、テムズ河では平均して1キロ流れる間にたった59センチしか下がらない。(日本最長の信濃川では866センチも下がる) だから滝というものは英国では珍しい存在なのだ。 
このアイラ・フォースの滝もトラウト・ベックからアンブルサイドへ向かっている時に標識を見かけ、見学してみることにした。道路脇に車を止め、斜面を下ること200m。着いてみると、落差は6〜7メートルくらい。日本の滝のイメージからするとかわいらしいものだ。しかし、谷の傍らの木陰に佇んでいると、ひんやりとした冷気が川面を流れてきて、長い間車を運転してきた身には心地良い。滝の上流では、靴を脱いで水に足を浸している人もいれば、滝の音にじっと聞き入っている人もいる。川に張り出した岩の上で横になっている人もいる。皆それぞれ自分の仕方で、自然のメッセージに耳を傾けているのだろう。英国の自然の中を歩き回って感じた事だが、そこで出会う英国人からはいつも、自然にじっくりと耳を傾けようという姿勢が見て取れた。車を止めた国道からこの谷までの間は、ごつごつとした岩場の傾斜地を利用した牧場で、親子連れの山羊が物珍し そうにこちらをじっと見つめていた。  

 

 

 

遠くを見つめる山羊の子 (アイラフォース)
A Kid (Aira Force)

 

 

 

**谷間の牧場 (カークストンパス)
Meadow in the valley. (Kirkstone Pass)

 

 

 

***山腹の石垣と雲 (カークストンパス)
The stone walls on the hillside and the clouds (Kirkstone Pass)    

 

先ほどからの雨も止み雲の動きが激しくなったと思ったら、 雲は散りじりに分かれ青空が顔を出した。 沢山のちぎれ雲が魚の群れのように空を流れて行く。 沢山の影が山腹の牧場を次々と横切って行く。 雲の大きさに対して人間の営みはいかにも小さく見えるが、その忍耐力は時として我々を感動させる。 石を積んで壁を作るという本当にカタツムリの歩みのようなゆっくりとした営みは、ついに山の頂上に至る長大な石垣を作り上げたのだ。
雲達はいとも簡単にこの山腹を通過して行くが後には何も残さない。
牧場を作ろうという人間の執念は、遅々とした歩みではあるが確実にその痕跡を残してゆく。
何百年か後の人間にもこの牧場はきっと受け継がれていくに違いない。
     

 

 

 

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Ambleside

 

 

 

英国で最も小さいブリッジハウス (アンブルサイド) 
Bridge House (Ambleside)

 

やっとの事でアンブルサイドの町に入ったが、ここの名物ブリッジハウスはどこにあるのだろう。車を止めてあたりをきょろきょろしていると、向こうから10歳くらいの女の子3人連れがやってくる。車の窓を開けてブリッジハウスはどこだろうと尋ねると、3人で競って道順を空に書き教えてくれた。 イギリスではどこでも親切に道を教えてくれたが、可愛い子3人がにこにこしながら教えてくれたのでとても嬉しくなった。

 

 

 

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Near Sawrey

 

 

 

霧雨の中のニアソーリー村
Near Sawrey village in drizzle.


我々が北部のケズイックを出発してその日の目的地ニアソーリー村に着いたのは夕方の4時頃だった。ウインダミア湖に近づくにつれて小雨が降り出し、夕食前の散策を楽しみにしていた妻をがっかりさせた。宿に入る前に見晴らしの良いところを求めて丘に向かう道を登ってみた。霧雨に霞んで遠くの牧場を眺めることは出来なかったが村の大体の様子を掴むことが出来た。石垣に挟まれた道路の両側には広い牧場があるが、ピーターラビットはきっとここで遊んでいたに違いない。

 

 

 

**長い影 (エスウェエイト湖畔) Long shadow (Esthwaite Water)

 

 

 

**仲良しの羊 (エスウェイト湖畔)  Esthwaite Water


エスウェイト湖は、ピーターラビットの作者ベアトリクス・ポターが「イギリスで一番美しい」と評した場所で、ピーターラビットが活躍した彼の有名なニアソーリー 村に一番近い湖だ。
私達がニアソーリー村に着いた時は、まだ雨が降ったりやんだりしていたが、その内曇り空が何となく明るくなってきた。宿はエスウェイト湖畔に在り、部屋の窓からも湖の端っこが伺える。歩いて10分の距離だ。5時半とはいえ夏のイギリスではまだまだ明るい。 7時に近くのパブに食事を予約して貰って散歩に出る。
外に出ると先程までの雨が嘘のように所々青空が顔を出している。石垣で囲まれた広い牧草地が湖まで続き、歩いていて大変に気持ち良い。何となくスキップしてしまった。時々雲間から太陽が顔を出すと、草の緑が鮮やかに輝き、立ち木が牧草地の上にながーい陰を描いてみせたりする。大きな石の橋を幾つか超えて、湖岸にたどり着いた。といっても水辺は灌木で覆われていて容易に近づけない。獣道を発見し恐る恐る茂みの中を進む。岸辺が見えてきたなと思ったら人の声がする。どうやら地元の釣り人のようだ。2人が何やら話している。こちらを振り向いたので、「ハロー」「ハロー」「沢山、釣れますか」「駄目だね、さっぱりだ。」 「魚は晩ご飯を食べに家に帰ったのかも知れませんよ」 「ははは、きっとそうだ」

 

 

 

ポターさんの庭の白い花 (ニアソーリー村)
White blossoms in Potter's garden. (Near Sawrey)

 

ニアソーリー村での2日目。全世界で読まれている「ピーターラビット」の作者ベアトリクス・ポターの家を訪れた。あいにくその日は休館日で、中に入ることは出来なかったが、売店や庭には入ることが出来た。世界的に大変有名な割にはポターさんの家の外観は小振りで質素だった。庭に面して小さな牧場がしつらえてあり、そこには羊の子が放たれていたが、かわいそうに小雨の中寒さから身を守るように2匹が石垣の側でじっと体を寄せ合い暖め合っていた。それまで英国で見かけた羊はどれも少々の雨は物ともせず平気な顔をしていたが・・・彼等は子供だからだろうか。
小雨の庭の中で一番目を引いたのがこの白い花であった。何という花であろうか。

 

 

 

霧のウインダミア湖  Foggy Lake Windermere.

 

 

ニアソーリー村からファーソーリー村を通過してウインダミア湖に着いた。霧雨が降ったりやんだりの天気で今ひとつさえない。エスウェイト湖周辺のピクニックは諦めて、フェリーで対岸に渡りボウネス、ウィンダミア、グラスミアとドライブする事にした。フェリー乗り場で次の便を待っている間湖畔を散歩した。霧雨の中で緑が一層その濃さを増し、そこに白いヨットが停泊している様子は幽玄な趣があり、それを小鴨が眺めていた。

 

 

 

ダブ・コテージ (グラスミア)
Grasmere

 


イギリスの誇る詩人、ウイリアム・ワーズワースが1799年から1808年迄住んでいた家である。この建物は昔は「鳩とオリーブの枝」と呼ばれる小さな宿だったそうである。
内部の見学は大変勉強になったが、どこを見ても昔の生活の大変さばかりが忍ばれる。この中の2階の一室に物置であろうか、壁から天井までびっしりと新聞紙を張りつめた所があった。当時の古い新聞であったので興味深く眺めたが、こんな光景どこかで見たよなー・・・・・ そうだ、神田日勝の絵だ!

 

 

 

黒い石の家の白いドア (グラスミア)
White door of the black stone house. (Grasmere)

 

 

 

 

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London

 

 

 

***公園での読書 (ハイドパーク)  Reading in the park. (Hyde Park)

 

 

 

シルエットとサーペンタイン池 (ハイドパーク)
Silhouettes and the Serpentine. (Hyde Park)

 

 

 

電車ごっこの姉妹鳥と目が合う (サーペンタイン池)
Playing train (The Serpentine)

 

 

餌をねだる鳥達 (サーペンタイン池)
Birds pleading for foods. (The Serpentain) 

 

 

 

道路は私の居間 (ロンドン塔近く)
This alley is my living room (near Tower of London)

 

 

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