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小原雅夫 イギリス写真展

 

 

From Countryside in England

 

Part 2

 

 

 

 

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Lacock village

 

 

 


**レイコック村の街角から  Lacock village

 

 

レイコック村は、バースの北東に位置し、車で40分位の距離にある。戸数百位の小さな村だが、歴史はレイコック・アビイ(修道院)が建設された1232年に遡る。
この村には、この修道院の建物と、世界で始めて写真を撮ったタルボットに関する博物館くらいしか無いが、目立った歴史遺産が無くとも大変に魅力的なところだ。 それは、村全体が二百年前の姿のままで保存されているからだ。(勿論個々の建物がいろんな歴史を持っていて、中には三百年、四百年前の建物もある) そしてここでは、その古い建物の中で、人々の生活がごく普通に営まれている。

人が普通に生活したまま古い建築などの遺産を保全するのが英国流のそして最も良い方法なのだ。人が住むと言うことは、温度湿度などを人にとって心地よい状態にコントロールすると言う事を意味する。 それはきっと建物にとっても良いことに違いない。では、そこに住む人にとっては古い建物はどうなのだろう。
窓が少なく暗い、そして場合によっては狭い、床がゆがんでいる、熱効率が悪い、等々現代建築と比較すると欠点ばかりが目立つ。
しかし英国人はそれ以上のものをこの古い家から得ているのだ。石や太い木材の持つ確かさ、周囲との景観上の調和、仮に崩れ去ってもその素材は自然に帰っていくだけと言う精神的な安らぎ、そして古い家に住む誇り。村全体はナショナル・トラストによって保存されている。

 

 

何となく優雅な建物 (レイコック・ビレッジ) Lacock village

 

 

教会への道 (レイコック・ビレッジ) Lacock. village

 

 

 

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Walking from Bibury to St.Aldwyns

 

 

 

**マナーハウスの大木 (バイブリー) A big tree in Bibury Court Hotel

 

 

英国の田舎では主としてB&Bに泊まったが、何泊かは豪華なマナーハウス(Monor House)に泊まろうという事になった。
マナーハウスとは昔の領主の館で、それをホテルに改装したものである。(昔の領主の城や館では、大地主としての地位を失った現在では、その維持・相続に困難をきたし、多くがホテルや博物館として生き残りをはかっている) 

日本から電話で予約しておいたここバイブリーのマナーハウスは、広い地の中に大きな花園や林もあり川も流れていて水鳥が遊んでいる。 希望すれば鱒釣りをする事も出来る。 門から玄関までは百メートル近くもあろうか。 玄関前の芝生は野球が出来るほどの広さがあるが、それをただの芝生として維持している所がすごいと思った。
我々がここに着いたのは夕方であったが西日が差して庭の大木が長い影を落とし、木の葉がきらきらと輝いて運転に疲れた目には心地よい。 支配人の中年の女性も、建物の内装もとても素敵だった。

ゆっくりと夕日に輝く広い庭を散歩し、シャワーを浴び、スーツに着替えてからレストランに向かう。このようなホテルではディナー時は必ずきちんとした服装を要求されるし、英国人の知人宅を訪問する予定もあったので、軽くてかさばらないのを荷物に入れておいたのだ。
ずっとTシャツにジーパンという気楽なスタイルだったので、久しぶりにスーツを着るとシャンとした気持ちになる。 そのシャンとした気持ちのまま背筋を伸ばして妻とレストランに向かう。 妻も少しドレッシーなワンピースだが、同じくシャンとしている。 
入り口では先程の支配人の女性が待機していてにこやかに挨拶しながら客をあちこちに案内している。 私達の番になり、どうぞこちらへと促されて行き着いた部屋は、豪華なシャンデリアが輝きゆったりとしたソファーがいくつも並ぶラウンジだ。 蝶ネクタイのウエイターが現れて、お飲物は何になさいますか? ・・・・食事前はここでゆったりと会話などを楽しみながらアペリティフを飲みなさいという事なのだろう・・・・妻はフレッシュジュース、私はワインを飲みながら、渡されたメニューを検討する。 日本と違い欧米のレストランではメニューの選択をせかされることはない。 時間をかけて、私は鱒料理、妻は鴨料理に決める。 2人で分け合って両方楽しもうというわけだ。
やがて案内が来て食堂に通される。 どのテーブルも客で一杯だ。 辺りを見回すと日本人と思しきグループが我々の他に3組居る。 向こうもこちらの存在に気付きちらちらと見ている。 あの東洋人らしい夫婦は日本人かしら?・・・等と話しているのであろう。 こちらは場慣れした風を装いつつ優雅にワインを飲み、おしゃべりをし・・・・・・・うん、この料理はなかなかいける! 

 

 

 

**水車小屋 (バイブリー)   A water mill ( Bibury )


翌朝私達はセント・オルドィン迄のパブリックフットパスを歩くことにした。マナーハウスの広い芝生の横を小川が流れているが、それに沿って川下へ歩いて行くと小さな石の橋が現れた。ここが敷地の境界線のようだ。振り返ると芝生の遠くにマナーハウスが小さく見える。この石の橋を渡ると、戸数20戸ほどの小さな集落があり、その中を隣村セント・オルドィンへのフットパスが走っている。 集落に入ってすぐ右手に2階建ての水車小屋があるが、この写真の建物もそれの関連施設のようで、わざわざ水の中に建ててある。
曇り空から太陽が顔を出し、建物の壁が明るく輝き始めた。古い石の壁に苔むしたスートの屋根はとても風情があるが、それをバックにしたこの小さな花達がなんとも愛らしい。
このような困難な場所に花壇を作って彩りを添えようというここの住人の美意識に、つい尊敬の念を抱いてしまった。
水に反射した建物と青い空に見とれているうち、どんな田舎のどんな片隅にも美のかけらは転がっているものなんだ、と、新たな発見をした気持ちになった。

 

 

フラッド (バイブリー)  Flood (Bibury)

 


川の流れは本当に緩やかで、このように河岸との高低差が殆ど無いところもある。
このような場所では雪解けや大雨の後では岸辺一帯も水で覆われてしまうためFloodと呼ばれる。


 

***雲と丘陵のフットパス (バイブリー)   
Hilly footpath under clouds  (Bibury)


さて、私達が今歩いているところは歩きやすい川沿いの牧場であるが、まったく道が無い。歩いていて、この方向でいいのだろうかと次第に不安になってくる。そのうちさきほどからの小雨も止み、向こうの空に小さな青空が顔を出した。 よく目を凝らすと木々の間を歩いてくる二人連れも見える。
 「この方向で良かっんだ!」
ほっとすると同時に、希望が一気に向こうの方角から訪れた気がした。  

 

 

**民家の庭先を流れるコルン川(セント・オルドウィン近く)
Coln river and the garden (near St.Aldwyns)


ここでコルン川は民家のすぐ庭先を流れている。 自分の庭の中をこのようなゆったりとした小川が流れていたらどんなにかいいだろう。 私は幼い頃、魚釣りをしたり木を削って模型船を作ったりするのが好きだった。 近くの公園に出かけては手製のボートを走らせたり、管理人の目を盗んで鮒釣りをしたりしたものだ。 このような自然な川なら、水性昆虫も沢山居るに違いない。 勿論大人にとっても最高の環境だ。 川べりの緑の芝生の上でコーヒーを飲んだり読書したり・・・・・・何という贅沢だろう!  

 

 

 

コルン川と民家 (セント・オルドウィンの近く )
Coln river and the houses (near St.Aldwyns )


私達が散策したフットパスはコルン川沿いであるが、時として大きく川から離れたりまた出会ったりを繰り返す。 川は再会する度にその姿を変えていた。

ある場所では周囲と高低差が殆ど無く一度大雨が降るとあたり一面水の下となるフラッド(洪水)と呼ばれる土地を流れていたかと思うと、丸太の橋が架かった狭い河幅を音を立てて流れてたりする。 芝生できれいに手入れされた民家の裏庭を流れていることもあったが、まるでその庭の付属物みたいな表情をしていた。「私有地につき、釣り禁止」と書いた看板が打ち付けられた柳の木の下で、あひる達と遊んでいることもあった。牧場の川縁の羊達の姿を映しながら流れている事もあった。

この流れの存在は、フットパスに大きな彩りを添えてくれて、我々ウォーカーにとっては最高のプレゼントだ。水の流れというのは何故こんなにも我々を引きつける魅力を持っているのだろう。
写真は、あともう少しでセント・オルドウィン村という畑の中の流れで遠くに農家の建物が見える。 コンクリートで護岸工事をしていない自然な流れというものが、いかに魅力に富んでいるか痛感した。
 

 

 

**セントオルドウィンの母子 ( St Aldwyns )


教会の帰り道我々がぶらぶら歩いていると、横道から親子連れがでてきた。 金髪の少年は紺のジャンパーに赤いズボン。 お母さんにしっかりと掴まっているが、我々を認めて何か気になるらしい。 私がちょっと手を振ったからなおさら気になる。 何度も何度も振り返る。
お母さんはその都度何かを話しかけている。 「ほら、ちゃんと前を見ないと危ないわよ」等と言っているのだろう。 向こうの歩くペースがだいぶ落ち、私達が追い越すこととなったので、追い越しざま「何と可愛い子でしょう」と話しかけると、若いお母さんはにっこりほほえんでサンキュー。

 

 

 

***雨  宿  り (セント・オルドウィンからバイブリーへ)
Shelter from rain (On the way to Bibury from St.Aldwyns. )


セント・オルドウィンからバイブリーへの帰り道である。 例によってこの付近もパブリック・フットパスがどう走っているのかはっきりしない。 不安にかられながら牧場の中をさ迷っていると雨が降り始めた。 それまでに体験した英国の雨というのは、大変に粒が細かく密度も薄く、帽子とジャンパーさえあれば平気だったが、この時ばかりは違っていた。 日本での土砂降りに近いものだ。 私達はあわてて近くの木の下に逃げ込んだ。 この付近の木は裾が大きく広がっていて傘のような形となっており、雨宿りにはぴったりだ。 木の下にはすでに先客がいたが、快く(?)私達を迎えてくれた。 少々の雨でも平気で草を食む彼らもこの時ばかりは参ったのだろう。 木の下でほっとしながら雨を拭いあたりを見回すと、少し離れた木の下でも彼らは思い思いのポーズで雨宿りをしている。彼らのシルエットがなんとも微笑ましい。 恨めしく思っていた雨だったが、この光景を見て、私の恨みや疲れは吹き飛んでしまった。

On our way back to Bibury from St.Aldwyns. The public footpath was not easy to follow in the neighborhood. Not knowing which way to go, we were wandering in a meadow. All of a sudden it began to rain. We already experienced the subtle rain of England, but this time it was quite different. It was rather similar to a downpour in Japan. We hurried to a big tree nearby. As many of other trees aroundthere, it was like an umbrella in shape and made a perfect shelter from the rain. Those who had already arrived accepted us quietly. They usually go on grazing even in rain, but this rain seemed too hard. At a distance I found other sheep also taking shelter from the rain in various postures, which made me smile. At first I hated the rain, but the sight of them made me very happy and I was sure that I was making a good trip.  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羊の親子がハロー

 

先程までの豪雨も止み、曇り空から時々陽が差し始めた。 本当にイギリスの天気はめまぐるしく変化する。 フットパスはここで先程とは違う牧場の中を横切っている。 牧場のそこここで羊達が草を食んでいるが、彼等の我々に対する反応は実にさまざまである。勿論どの羊も、どんなに食事に夢中でも、ちょっと会釈をして(何となくそう見えた)道をあけてくれるあたりは流石に紳士の国である。 問題はその後の我々との距離の取り方だ。 ずっと遠くへ行っておびえたふうでこちらを見ているもの、ちょっと体をずらすだけで相変わらず食べ続けるもの、道を空けてから2、3m先でけげんそうにこちらを見ているもの。中には愛想のいいのがいて、わざわざ近くまでやって来て「ハロー」とにこにこしている。 その子供も一緒にこちら迄やって来て母親と一緒ににこにこしている。
羊にも個性は在るものなんだ、とか、親の後ろ姿を見て子は育つ、等としきりに感心する。

 

 

 

**菜の花と羊の親子 ( セント・オルドウィン ) Rapes and sheep (St.Aldwyns)


しばらく行ったところでようやく牧場の中の道は終わりとなる。 扉を開けて隣の菜の花畑行こうとすると、その中で羊の親子が草を食んでいる。 勿論そこは羊は入ってはいけないところだ。 菜の花畑なのだから。 どこかの隙間から侵入したものと見える。私が優しく「そこへ入っちゃ駄目だよ」と声を掛けると、親羊は一瞬大変に困った顔をしたが(上の写真)、次の瞬間いきなり全速力で駆け出した。子羊たちもそれを追う。柵沿いに走ってなんとかこちらの側に戻ろうとしているのが、はっきりと見て取れる。 その様子からして、この親は悪いと知ってて隣の畑に侵入したのだ。
私に悪事を発見され必死で逃げようとしている。きっと以前に現場を押さえられ、しこたま絞られたことがあるに違いない。 私はふと、ピーターラビットが畑を荒らして追いかけられる場面を思い出した。

 


**バイブリーのバラ (バイブリー)  Pink roses beside the footpath  (Bibury)  


パブリック・フットパスは牧場や畑を過ぎて民家の庭先にさしかかった。「英国人は皆一流の庭師だ」という言葉は日本で何度も耳にしたが、それは本当かも知れない。公園や道路は勿論、町中の民家も田舎の農家も、どんな家でも実に美しく花で飾り立てている。石の持つ単調さ冷たさを和らげるには花で飾るのが最も良い方法なのかも知れない。
この民家は、コッツウオルズ特有のライムストーンという蜂蜜色をした石灰岩で出来ているが、広い裏庭は勿論、家の周囲全体に色々な草花を植えている。この石を背景にした沢山の花々は実に美しく、つい立ち止まって見とれてしまった。 この家の人は、壁の色と草花の色との調和を大切に考えて庭作りをしていると思われるが、特別な庭園やお金持ちの邸宅ではない、ごく普通の田舎の民家で、繊細な美意識で庭作りがされているところに、私は本当の意味での英国の豊かさを見た気がした。
 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**森の中の古い家(バイブリ−) (Bibury)


これでいよいよ私達の散歩も終わりである。軽い散歩のつもりで出かけたのに、出発してからすでに6時間も経っている。 雨に濡れながら歩いたせいもあるが、写真を撮りながらなので余計時間がかかってしまった。 妻に「ごめんごめん、もう写真は撮らないから」等と言いながら歩いていたのだが、後僅かで出発地のバイブリー・コート・ホテルという所で脇道の奥に何やら魅力的な雰囲気を保った小さな家々がある。 どうも昔からある集落のようだ。 これは何としても写しておかねば。 すぐ追いつくから先に行っててと言い放ち、小走りに脇道を進んでみる。やっぱりそうだ! もう3、4百年は経ったであろう建物たちが昔の雰囲気のままちゃんと集落ごと残っているのだ。 どうも現役の住居としても使われているようだ。
ほんの十件ばかりで、緑の木立ちの中で肩を寄せあっている集落を見ると、中世の人々の生活の様子がいろいろ想像され、不思議な感慨に襲われる。
 

 

 

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Moreton-in-marsh

 

 

**馬  小  屋 (モートン・イン・マーシュ)
A Stable  (Moreton−in−Marsh)


犬たちは考えている。「さて、これから何をしようか?」 若くぴちぴちした娘さんは、馬から鞍を外すと小屋の奥へと消えてしまった。明るい太陽の下、馬の先になり後になり、汗と共に草原を走るのは一日の大きな喜びだ。しかしその喜びも今となっては過去の事。あと残るは夕食の楽しみだけか………犬たちはいつも暇なのだ。

The dogs are thinking, "What shall I do next?"
The young cheerful landlady disappeared into the stable with the horse.
It is a great pleasure to run in an open field with her.   But the time is over.
Now supper is the only pleasure for today.  
Dogs are always at a loss how to spend the hours.

 

 

 

**二羽のガチョウ (ニューファームにて) Two geese (Moreton-in-Marsh)


ニューファーム近くの農家の作業場周辺を散歩していたら、二羽のガチョウとばったり出くわした。彼等は自分たちのいつもの散歩道に見ず知らずの侵入者が現れたので、至極ご機嫌が悪い。 二羽でそろって私達を威嚇している。 こうしてみるとガチョウというのはなかなか気が荒いようだ。 ただ、二羽の行動スタイルが全くと言っていいほど同じで、相似形が二つ並んで移動しているようなのがユーモラスだった。

 

 

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Hidcote Manor Garden

 

 

 

 **花園での散策(ヒドコートマナーガーデン)  
Walking in the flower garden

 

ヒドコートマナーガーデンは、世界的に有名な庭園の一つだそうだ。特徴は様々なスタイル・大きさの庭が作られていることで、その数28。樹木をきちんと幾何学的に刈り込んだ整形式の物や、ごく自然のスタイルに低木の樹木を植え、その間に色とりどりの草花を配した物など様々だが、庭から庭へと巡り歩くのは、何か秘密の花園を探検している様な趣がある。
中にはザ・ロングウォークと呼ばれる長さ50メートル近くはあると思われる長方形の庭もある。この庭には花は一つも無いが、側面は高さ3〜4mほどの垂直に刈り込まれた緑の壁で地面はもちろん緑の芝生。50メートルの緑のプールに入ったような感じ、と言えば大体あたっているだろう。端に立派な門があるが別に道路に通じているわけではなく、かなりの高台にあるため、そこからは、うねうねと続く緩やかな丘陵に展開する牧場や畑が一望でき、牧歌的気分も満喫できる。そんな庭園では、英国人のカップルがゆったりと花を愛でながら散歩している光景をよく見かけるが、彼等の表情はとても幸せそうだ。

 

 

 

噴水のある花園 (ヒドコートマナー・ガーデン)
Hidcote Manor Garden

 

秘密の花園達の間は写真に見られるような生け垣で仕切られている。この緑のゲートをくぐる度に次はどんな庭が現れるのかとわくわくする。

 

 

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Stratford-upon-Avon

 

 

 

 

***ストラトフォードの馬車 (ストラトフォード・アポン・エイボン)
A carriage at Stratford-upon-Avon 


シェークスピア関連の建物ニュープレイスを通りから見物していると、突然馬の蹄と車輪の音。ふと音のする方を見ると今しも馬車がこちらへ曲がってくるところだ。その迫力に思わずカメラのシャッターを切る。二頭立てのどうどうたる馬車で、日本の観光地でよく見かけるのとは訳が違う。 御者がいかにもそれにふさわしい風貌だったのは覚えていたが、今こうして写真を引き伸ばしてみて気がついた。馬車の上には沢山の素敵な表情があったのだ。    

We were looking at the New Place from the street. 
Then suddenly there were sounds of hoofs and carriage wheels.
A carriage was coming toward us. 
I released the shutter at once, but it was only after the picture was printed that I noticed a variety of joyful faces on the carriage.  

 

 

 

チューダー朝様式の建物 (ストラトフォード・アポン・エイボン)

 

 

**昼のベンチ (ストラトフォード・アポン・エイヴォン)
Lunchtime (Stratford-upon-Avon)


今は昼を少し回ったところだ。ここストラトフォードのロイヤルシェークスピア劇場前の公園にはベンチが沢山有るが、そのどれにも家族連れや夫婦連れが腰を下ろしお弁当を広げている。バスケットに詰め込んだ料理を広げている一団もあるが、大半はちょっとした飲物にスーパーで買ったサンドイッチやリンゴだ。噂に聞いていた通り英国人の昼食は質素なようだ。
この写真は深い緑のバックに夫婦の表情が面白かったので写した。 二人はあまりおしゃべりをせず静かにゆっくりとサンドイッチを食べている。パッケージからしてこれは市販の物だ。右端の一人はこの夫婦とは関係ない。
この写真から英国人の生活の一端を解説してみよう。まず立派なベンチであるが、英国では到る所にベンチが有り、それらはとても有効に使われている。つまり、皆散歩が大好きだという事だ。それも、老人から子供まで。(我が家の付近の散歩者は殆ど全部が老人であるが、大きな違いだ。)また、質素な食事に比較して彼等の身なりはきちんとしている。手入れが行き届いた革靴、上等そうな傘、質の良さそうな衣服。この夫婦がインテリの雰囲気を漂わせているのに対し、隣のおじさんは下町風であるが、それでもズボンの折り目はきちんとしている。 夏場の暑い時期の旅行であったが、くだけた格好の姿はあまり見かけなかったし、どこへ行っても緑や花の手入れが行き届いていて、ゴミ一つ見かけなかったのは流石であった。

 

 

 

クリーニング屋の少年 (ストラトフォード・アポン・エイボン)

 

 

 

      **鳥に餌をやる少年 (ストラトフォード・アポン・エイヴォン)
The boy feeding birds (Stratford-upon-Avon)

 

ストラトフォードのロイヤルシェークスピア劇場付近はエイヴォン川の他に運河もあり、水鳥が沢山遊んでいる。当然彼らに餌を与える人も沢山いるが、この母子に勝るものは誰もいなかった。写真から分かるように、この母子の態度は真摯そのものである。多くの人が「ほら、餌だ」と面白半分に立ったまま餌を投げ与えるのに対し、彼等はひざまずいて「ほら、餌ですよ。食べてくださいね。」といった風情で一生懸命に餌を撒いている。 彼等のきちんとした身なりも鳥達への敬意の現れであるかのように見えてくる。 鳥達もこの二人の愛情を敏感に察して集まってくる。川面での鳥達の配置が、その力関係を表わしていて面白い。まず最も餌に近い良い席は、その体の大きさで他を圧倒する白鳥が占めている。次は雁の仲間であろうか、一番外を鴨などの小型の鳥が取り巻いている。 それをベンチで眺めている人々、乳母車を押した親子連れ、スーツを着て犬を散歩させている働き盛りの男性。英国人の日常生活 の一端を伺う事が出来て楽しい。    

 

 

 

シェークスピアが遊んだ裏庭 (ストラトフォード・アポン・エイヴォン)
The backyard of Shakespeare's Birthplace. (Stratford-upon-Avon)

 

 

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Broadway ---Chipping Campden

 

 

 

 ブロードウエイの小路  Alley in Broadway.


右は美術品を扱ったギャラリーである。しっかりと閉まったドアをノックしたら、開けて中に招じ入れてくれた。中には17、8世紀の有名な画家の絵が所狭しと並んでおり、値段も数千万円の物まである。 親切な店の主人といろいろ話をしたが、帰り際に立派な図録をくれたので、お礼に自作の絵葉書をプレゼントした。8枚セットのフランス風景であったがパリの冬の風景をとても気に入ってくれた。しかしながら、この図録とても重く日本に持ち帰るのに大変苦労した。今は本棚で安住の地を得ているが、何度ごみ箱への危機にさらされたことだろう。このギャラリー確かに良い絵画を揃えているが、この様な地方の小さな村で商売としてやっていけるのであろうかと少々お節介な心配をしたりした。
この写真の小路は、スリ減った敷石が奥まで続いているが、中に入ると、緑の木々が良く手入れされた庭があり、面して喫茶店もある。妻が車で待っているので入るのをあきらめたが、雰囲気の良さそうな店であった。  

 

 

 

小さな郵便ポストのある店 (ブロードウエイ)
A store with a postbox. (Broadway)

 

 

 

ブロードウエイのショウウインドウ  Window shopping. (Broadway)

 

 

 

**チッピング・カムデンの町並  Chipping Campden


ブロードウエイの土産物屋で、イタリア料理店を尋ねたところ、チッピングカムデンにいい店があると教えてくれた。店名は「カミネトー」。料理人の腕も店員の感じもとても良く、久しぶりに食べるスパゲティーはとても旨かった。この町は13、4世紀にはウール・タウンとして栄え、それにちなんだ建物があちこちにある。一番有名なのが、マーケットホール。メイン道路を挟んで集落が形成されているが、右手の家並みのほうが少し高くなっており、ここから道路の反対側を見下ろすのも悪くない。建物は蜂蜜色のライムストーンを用いた伝統的な物だが、中には14世紀からの建物を利用したパブもあり、屋根の稜線のたわみにその歴史の長さを感じさせられる。ちょっと入って一杯やりたかったが、宿までは車でだいぶあるので断念した。
英国の凄いところは、この様に特別な建物だけではなく、民家も含めた普通の町並がそのまま保されているところにあり、それが町を歩く本当の喜びを旅行者に与えてくれる。  

 

 

 

 

**通路の奥には魅力的な何かがありそう 
Chipping Campden

 

 

 

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